お腹の赤ちゃんの検査の種類

お腹の赤ちゃんの検査には、妊婦健診で全員に受けていただく検査(ふつうの超音波検査)と、希望した人だけが受ける「出生前検査」があります。

※「出生前検査」という言葉は、妊婦健診の検査も含めて赤ちゃんの検査全体を指す場合もありますが、このサイトでは希望した人だけが受ける検査のグループを出生前検査と呼びます。

妊婦健診の検査

妊婦健診では、妊婦さんの健康状態と赤ちゃんの健康状態を合わせて見守っていきます。妊婦さんは血圧・体重を測定し、尿検査、血糖、貧血、感染症などの血液検査を受け、腟内の細菌や子宮頸がんの検査も受けます。


妊婦健診の検査は、安全なお産のために欠かせない、すべての人に受けていただきたい基本的な検査です。
妊婦健診は公費による補助制度があります。詳しくは、お住まいの自治体にお尋ねください。

妊婦健診の検査の詳細は 「出生前検査認証制度等啓発事業のウェブサイト」をご覧ください。

また、妊婦健診では、産科医による、短時間の超音波検査がおこなわれます。これは、赤ちゃんが元気で大きくなっているか、流産・早産や発育の遅れのきざしがないかをみる基本的な検査です。胎盤、羊水、子宮口に問題がないかも調べます。


妊婦健診の超音波検査は赤ちゃんの病気を詳しく調べません。
でも、この検査でも、赤ちゃんの先天的な病気がうたがわれるサインが、たまたま目にとまることがあります。

からだのつくりに表れる病気だけではなく、染色体の病気にも目に見えるサイン(超音波マーカー)がありますので、偶然見えることがあります。その場合は、もっと詳しい検査を受けてはどうかと提案されるかもしれません。

「病気のサインは知りたくない」と思う方は、前もって、医師にその気持ちを伝えてください。

たとえば「妊娠中から治療の準備をした方が赤ちゃんのためになる病気、生まれてすぐに治療できるように大きな病院へ転院したほうがいい病気、胎児治療ができる病気だけを教えてください」と言うこともできます。

希望した人が受ける「出生前検査」(妊婦健診ではおこなわれない検査)

おひとりおひとりが、情報やサポートを受けながら、受けるかどうかを決める検査です。

出生前検査は妊婦健診ではおこなわれませんし、どの産婦人科医療機関でも受けられるわけではありません。検査によっては実施している施設が少ない検査もあります。

日本には、出生前検査を受ける人の数が正確にわかる統計はありません。それでも、いくつかの調査からNIPT、羊水検査、絨毛検査、母体血清マーカー、コンバインド検査の合計件数(推計)を計算してみますと、年間の出産件数のおよそ1割に相当する数になります。

参考文献・ 「出生前診断の提供等に係る体制の構築に関する研究」(研究代表者 小西郁生)/「NIPTコンソーシアム」(事務局 関沢明彦)

出生前検査は自費診療で、検査料は、ご自身の負担になります。金額は検査や施設によって大きな幅があり、数万円~20万円ほどです。

出生前検査は、「遺伝学的検査」と「画像検査(超音波検査)」に分かれますので順に説明します。

一部の超音波検査(超音波マーカーの検査)は遺伝学的検査に含まれます。

染色体を調べる遺伝学的検査

遺伝学的検査は、染色体や遺伝子の変化を見る検査です。一般的には染色体を調べることが多く、このサイトでは染色体を対象にした場合について説明します。

染色体を調べる遺伝学的検査

染色体を調べる遺伝学的検査

※横にスワイプすると表全体を見ることができます。

非確定的検査についてわかっておきたいこと

非確定的検査が身近になった現代の妊婦さんは「血液検査だけで赤ちゃんの病気がわかるようになった」と思ってしまいがちですが、現実はそうではないことをぜひご理解ください。

非確定的検査は、もし、結果が「陽性」と出たら、羊水検査など流産のリスクがある検査を受けるかどうか考えることになります。非確定的検査は羊水検査などのかわりにはならず、確定的検査を受けるかどうか判断するための検査です。

先天性の病気がある赤ちゃんとその原因

Thompson & Thompson Genetics in Medicine 8th Edition Saunders
2016:Wellesley D.et J Hum Genet 2012: 20:521 を参照して作図

非確定的検査には、もうひとつ特徴があります。それは、調べる病気の数が少ないということです。たとえばNIPTが対象としているのは「ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー」という3つの病気だけです。

生まれつきの病気にはさまざまなものがあります(お腹の赤ちゃんの病気をご覧ください)。生まれつき病気がある赤ちゃんのうち、染色体の病気がある赤ちゃんは4人に1人だけで、残り3人の染色体は正常です

さらに、その染色体の病気にもいろいろな病気があり、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーの赤ちゃんは、染色体の病気がある赤ちゃん全体の70%にとどまります。NIPTで調べられる病気のある赤ちゃんは、生まれつき病気がある赤ちゃん全体の2割に満たないという計算になります。

実際、NIPTを受けた人のその後を国内で追跡調査した報告によると、NIPTで陰性(病気がない)となった約6万件のうち、4%に相当する2,370件には何らかの病気があったことがわかりました。心臓病など内臓やからだのつくりに出るさまざまな病気が見つかった赤ちゃんが多いですが、他にもいろいろなケースが見られました。

NIPTで陽性だったのは、約10万件のうち1.8%にあたる1,827件でした。NIPTでトリソミーが見つかった人より、そのあとに、他の病気がわかった人の方がたくさんいました。
くわしくは「NIPTを受けた妊婦さん10万人の調査」をご覧ください。

非確定的検査は、その限界をよく理解したうえで、受けるかどうかお考えください。

NIPTで陰性だった赤ちゃんの調査

出典 NIPTコンソーシアム

画像検査(胎児超音波検査)

胎児超音波検査は、この検査の訓練を受けた医師や検査技師が、時間をかけて胎児の内臓、骨、血管などを見ていきます。

調べる病気は心臓の病気、脳の病気、口唇口蓋裂、横隔膜ヘルニア、消化管の閉鎖、腎臓や膀胱の病気、手足の形や指の本数など多岐に渡ります。赤ちゃんが成長していくので、検査時期によって調べるポイントが変わります。
染色体の病気があるかどうかについては、染色体の病気がある時に変化する特定の場所「マーカー」を見ます。

「精密胎児超音波検査」「胎児ドック」などさまざまな名称で行われ、名称が同じでも内容が異なることがあります。

それぞれの検査の詳しい説明
(正確さ、費用など)は、
下記ページでご覧になれます。

染色体を調べる遺伝学的検査

画像検査(超音波検査)