NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)

NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)

認証施設がNIPTで調べる病気を限定している理由

当運営委員会の認証施設では、NIPTで調べる病気を、検査の精度が十分に検証されているダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つの病気に限定しています。しかし、認証されていない施設ではこれらの3つ以外のトリソミーや性染色体、さらには染色体の微小な変化が関わる病気まで調べていることがあります。
認証施設ではそれらの検査をおこなっていない理由を、以下で説明します。

性染色体について

性染色体とは、赤ちゃんの性別にかかわる染色体のことです。

性染色体の数の変化で起こる疾患にはターナー症候群やクラインフェルター症候群があります。これらの疾患での検査精度は3つの染色体トリソミーにくらべて低いことが知られています。特に、ターナー症候群ではモザイクといって赤ちゃんの細胞の一部でのみ染色体変化があるケースが比較的多いこと、また、妊婦さん自身の年齢が高くなると検査精度が低下することが知られています。

性染色体の検査で赤ちゃんの性別が知りたいと希望する妊婦さんもいます。しかし、これも一般に思われているほど確実ではないことと、早い時期にわかることで性別の選択が行われる可能性のあることなどから、行われていません。性別によって可能性が異なる遺伝性の病気を調べたい場合(重篤なX連鎖性遺伝病など)には最初のステップとして性別を調べることもありますが、そのような場合には通常、確定的検査が選択されます。

3つの染色体トリソミー以外の常染色体の数の異常について

「常染色体」とは、性染色体以外の染色体のことです。

21番、18番、13番以外の常染色体に数の異常がある受精卵はほとんどが流産するか、もしくは妊娠に至りません。そのためひとつひとつの病気の発生率が低いうえに感度が低く(検査の見逃しが多い)、陽性的中率も低い検査となります。そのため、NIPTで陽性と出たとしても、そこから羊水検査に進み、その疾患が確認される確率は相当に低いと推定されます。

染色体の微小な変化について

これらの病気も非常に頻度が低い病気ですから、同様に考えられます。例えば、微小欠失症候群で最も頻度が高い病気のひとつである22q11.2欠失症候群の罹患率は4500分の1程度と推定されています。海外で行われているある会社の検査におけるこの病気の検査感度は54%で、特異度は99.9%といわれています。このデータをもとに検査の精度を計算してみると、この検査で陽性と出た場合に赤ちゃんに病気がある確率「陽性的中率」は10.7%となり、その的中率はかなり低いことがわかります。このほかの微小欠失症候群はもっと頻度が稀ですので、陽性的中率はもっと低下することになります。

このように、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーの3つの病気以外を対象としてNIPTをおこなうことの臨床的な有用性はないと考えられ、米国の産婦人科学会でも検査は推奨しないとの見解が述べられています。海外でも、NIPTは3つのトリソミーに限定しておこなうのが主流です。

American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020 Oct;136(4):e48-e69. doi: 10.1097/AOG.0000000000004084. PMID: 32804883.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32804883/


3つのトリソミー以外の病気がご心配な方は、遺伝カウンセリングにご相談ください。